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林檎とレールのあいだ

Apple製品や鉄道旅行について書いたり書かなかったり

世界一簡単なメールアプリを作って分かったこと

去年、Androidで『世界一簡単なメールアプリ』を作ってみたのでその経緯をまとめておきます。

※ちなみに「世界一」は当社比であり、無補償です。

 

世界一簡単なメールアプリとはなにか?

世界一簡単なメールアプリとは、その名からわかる通り、世界中のどんな人でも使いこなすことができるメールアプリということです。

 

どんな人でも、というのはあえて言えば、機械に弱い人やお年寄りということになります。

 

とにかく、今まで、パソコンや携帯などの電子機器を触ったことがない人でも、あるいは使ってみようと思ったことはあるけど躊躇している人でも、あるいは一度は使ってみたけど難しくて挫折してしまったような人達でも使えることを想定していて、Jobs風に言えば「The mail application for the rest of us.」です。

 

なぜそんなものを作ったのか

このアプリを作るきっかけとなったのは昨年の母の入院です。

 

僕の母は、"超"がいくつ付くか分からないほどの機械音痴です。

唯一使える電子機器はTVのリモコンぐらいではないでしょうか。そのリモコンですら時々混乱しているのですが。

 

ですからもちろん携帯なんか持っていません。

そんな母が入院となると、通信手段が全くなくなってしまうのです。

病院には公衆電話がありましたが、母の入院の理由が足の手術だったのでしばらくはベッドから動くこともできず公衆電話にもいけない状態でした。

 

今僕は、母とは離れて暮らしており、何かあっても、というか何もないとしても全く通信手段がないというのはさすがにまずい。

かといって今から携帯を持たせても、とても使いこなすことはできないし、もともと病室は基本的に携帯の通話はできないとのこと。

 

でもメールは使っても構わないということで、何とかメールできる環境を整えようと思ったのがそもそものきっかけです。

 

機械音痴とはどういうことか

さて、どうやってメールが使える環境を整えるかを考える前に、母は機械のどういうところが苦手なのか考えました。

箇条書きにすると 

1.機械が勝手に動き出すのはNG.

  機械というのは本来、人間が何かやって初めて動くもの。という考えがあるのかないのかはわかりませんが、とにかく機械が突然動き出すとパニックになります。たとえばテーブルに置いてあった僕の携帯が鳴り出すと慌てますし、掃除をしていて予期せず機械にぶつかったときにLEDが点灯したりすると慌てます。突然動いて(というか鳴り出して)もいいのは家の黒電話だけです。

 

2.機械には自爆ボタンがあると思っている

いままでもビデオデッキやラジカセなどいくつかの機器の操作にはチャレンジはしてもらいました。しかし、どうしても順番が覚えられず、覚えていたとしても間違えるのではないかと次に進めないのです。間違ってもいいじゃないかと思うのですが、どうも間違ったボタンを押すと壊れてしまうことがあると思い込んでいるようです。

 

3.モードという概念がわからない

テレビやビデオには入力切替というのがありますが、この辺の切り替えが難しいようです。リモコンで間違って切り替えてしまうと、もうわからなくなってしまいます。ビデオがうまく見れないのはこれが原因です。

昨年、ブラウン管テレビが壊れてしまってしかたなく液晶テレビに買い換えたのですが、地デジとBSなど、さらにモードが増えてしまってますます訳が分からなくなるかと思ったのですが、2つあれば混乱してしまうので、それ以上モードが増えても、増えたことも分からず混乱の度合いはあまり変わらないようでホッとしました。

 

4.独自のモード概念がある

ビデオの操作を教えていた時、まず「再生ボタン」と「停止ボタン」を教えました。その後「早送りボタン」を教えたのですが、「早送り停止ボタン」があると思ったらしく、「停止ボタン」を押すという発想がなくて、しかたなく最後まで音声のない早送りで見るしかなかったそうです。ちなみにテープが最後まで行って突然巻き戻しが始まると慌てます。

VHSのテープは時間によって大きさが違っていると思い込んでいて、新しいテープを買うときにいつも入るかどうか心配していました。

 

5.余計なことが気にかかる

僕がなにか見せたいものがあって携帯とかタブレットの画面なんかを見せると、「なんでこの赤いところは赤って表示されるの?」などと、どのレベルの質問なのかわからない、高尚な質問をされることが多々あります。

 

 さてどうするか

そんな機械音痴な母がどうやったらメールを使えるようになるか。

 

誰もが真っ先に思いつく「携帯」。しかし、携帯を使いこなすのは以下の理由から難しいと判断しました。

 

まず、ガラケーを考えました。実際にメールを作成する場合、メールボタンを押して、新規作成を押して、宛先を選んで、本文にカーソルを移動して、日本語、数字などを切り替えながら文章を打つ。。

これをマスターするまでにいったいどれだけかかるか分かりません。

らくらくホンとかならもう少し楽かもしれませんんが、それでも間近に迫った入院の日までにマスターできるとはとても思えませんでした。

 

次にスマホですが、こちらもらくらくスマホとかあるようですが、まず、あのソフトキーボードが無理だと思いました。

入力欄をタップすると画面の下からニュルっと出てきては、さっと消えていくキーボード。あれは機械が勝手に動きだすというあってはならない事象に等しい動きです。キーボードを出すという指示をしていないのに突然出てきますから。

そしてスマホの画面の大きさで、手を使ってキーやボタンを正確に押すのもおそらく難しい。

 

そうなると、もうボタンやキーボードでメールを書くということは難しい。

 

ではどうするか。

 

 

手書きしかない。。」

 

 

そう、もう手紙を書いてもらう発想です。

 

 

どうやって?

 

 

スマホの画面では手書きの文字を書くには小さすぎる。

となると、タブレットか。。 

 

色々考えた結果たどり着いたのはタブレットでした。 

なんかいきなり最先端の機器にたどり着いてしまったけど大丈夫か?

 

タブレットを使ってフリーハンドで絵を描けるアプリは既にいろいろあって、しかも書いたものをメールで送信する機能もほとんど実装されています。

 

でも、実際に描いた物をメールに添付して送るときは、宛先を選んだり件名を入力したりしなければなりません。

これはちょっと無理です。しかも、宛先を間違えたりしても本人はそれを自覚できない恐れもあります。

 

 

もうこうなったら、自分で作るしかない。。

 

 

ということで、母専用のメールアプリを作ることにしました。

自分で作るのであれば、何の制約もなく最適なものが作れるはずです。 

そして考えたアプリケーションの仕様は以下のようなものでした。

 

  • メールの内容は手書きで描き、画像ファイルを添付した形式とする。
  • 宛先は僕のみで、あらかじめ固定。
  • 件名もあらかじめ固定にしておいて、使用者本人は一切意識しない。
  • 僕からのメールしか表示しない。

 

手書きの部分に関しても、色は黒一色。消しゴム機能もなしとしました。色の選択も消しゴムもモードの選択だし、もともと部分的に消すとかいう概念はないと思うので。

 

とにかく必要最小限の機能だけにしました。

 

さらにタブレット側にも工夫しました。

まず用意したのは3GモデルのNexus 7

通信ができなければどうしようもないのですが、かといってWiFiを使った場合は設定だの、繋がらないだのいろいろトラブルが予想されるので一旦設定すればずっと使えるように3Gモデルにしました。

ちなみに、通信料を安くするために契約したのはBIC SIMの月額945円コースです。

 

 そして完成へ

なんとか急いで作ったアプリをタブレットに入れました。

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余計なことができないようにアプリのアイコンは1個だけ。

もちろんすべてのページの同じ場所に配置して、もし別のページに移ってしまったとしても混乱しないようにしています。画面下にも置きましたが。

  

アプリの起動画面はこんな感じ。メールを「送る」「読む」のボタンだけがデカデカと表示されます。 

f:id:iganao:20140111190321p:plain

 

「送る」ボタンを押すとメールを書く画面に移るので、スタイラスを使ってメールを描いてもらいます。 

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書き終わったら「送る」ボタンを押すだけ。

 

「読む」ボタンを押すと最新のメールが表示されます。

別のメールを読むときは「前のメール」ボタンと「次のメール」ボタンを押します。

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読み終わったら「やめる」ボタンを押す。

 

この3画面だけで構成されたメールアプリにしました。

  

さて、ここまで簡単にしたのだからいくら機械音痴とはいえ、さすがに使えるだろうと、このタブレットをもって母のもとに向かい実際に使ってもらいました。

 

すると。

 

 

 

 

 

つまづいた。。。orz

 

 

 

 

 

さて、皆さん、どこでつまづいたと思いますか?

 

最初の画面で「送る」ボタンを押す。

 ⇒ クリア!

次の画面でメールを書く。

 ⇒ クリア!

書き終わったら「送る」ボタンを押す。

 ⇒ フリーズ!

  

ここで、つまづきました。

  

なぜでしょうか?

  

 

なかなか先に進まないので「送る」ボタンを押してって言ったのですが、母曰く

 

 

『さっき、もう「送る」ボタン押したわよね?』

 

 

 

 

 

 

 

  御意。

 

 

 

 

 

たしかにさっきすでに「送る」を押しています。 

1通のメールを送るのになぜ「送る」を2回押すのかに疑問を持ったわけです。

  

ハッとさせられました。 

 

最初の「送る」はメールを書いて送るという一連の操作を総称して「送る」と表現し、次の「送る」は実際の送信操作を表現しているわけですが、特にその違いを意識することなくどちらも「送る」としていました。

しかし母はおそらくボタンの文字の意味をどちらも同じ意味にとらえたのだと思います。

 

何も考えず、言われるままに操作しているだけと思っていたのですが、母なりに理解しながら進めていたのです。

 

 かあさん、ごめんよ(TへT)

 

言われてみればたしかに「送る」を2回押すのはおかしい。

 

ということで、最初のボタンは「書く」に変更しました。

f:id:iganao:20140111200725p:plain

そしてメールを書く画面で「送る」ボタンが下にあると、書いている間に知らず知らずに触れてしまって、突然画面が変わってしまう(機械が勝手に動くに相当)のでボタンを上に配置するように改良しました。

それと書く画面の「やめる」という言葉もよく意味が分からないらしく、何がいいか聞いたら「消す」がいいということでそのように変更。

  

こうして、なんとか迷うことなくメールを送れるアプリとして完成に至りました。

  

突貫で作ったので見た目はしょぼいですが、当初の目的を達成できたのでこれで良しとしています。 

そしてこのアプリのおかげで、母も連絡手段を持つことができてだいぶ安心したようです。 

 

さらに、一つ分かったことが。 

 

週末に見舞いに行くとしきりに、「看護師さんがこのタブなんとかっていうのを使いこなしていることを褒めてくれるのよ!」などど嬉しそうに話しているのを聞くと、機械音痴な母も、こういったものを使ってみたいと思っていたのだなということでした。

使いこなしているかどうかはともかく、タブレットを使っている自分にご満悦のご様子。 

 

母はすでに無事に退院しましたが、結局、1か月半の入院の間に母が送ってきたメールは100通を超えました。あわてて作った割には十分に役に立ったと思います。

  

そして、退院してからもタブレットでメールを送ってくるのですが、

 

最近こんなことを言うようになりました。

 

 

 

 

 

 

「携帯って私にも使えるかしら。。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やばい。